商社不要論とか言われているけど、どんな役割をしているの?
今回は貿易商社の種類と役割、そして将来性について解説していきます。
【貿易商社の種類】
総合商社
総合商社は、「ラーメンから航空機まで」と表現されるいわゆる何でも屋です。
身近な食料品から普段はあまり気にしない産業、例えば石油や天然ガスなどの資源、樹脂や化学品などの材料、さらには金融から宇宙開発まで、あらゆる事業を手掛けています。
総合商社の主な役割は、トレード(貿易・販売・物流)、事業投資(金融)、情報収集と提供などがあります。
世界各国に幅広く展開する総合商社が築き上げてきたネットワークや現地情報の蓄積は、インターネットで情報検索が簡単にできる時代においても、貴重な財産です。
特に現地の情勢、新たな技術に関わる情報など総合商社の大きな事業規模やネットワークがなければ手に入らない情報も多いです。
現在はどちらかというとトレード(モノを右から左に流す仕事)よりも事業投資や運営会社(買収・出資した国内外の企業成長に伴う企業価値の増大や配当金などを通して収益を上げる)としての側面が非常に強くなっています。
どの分野の事業会社へ投資をしていくのかを各総合商社は判断し投資事業を進めています。
より多くの利益を生み出し、収入源を確保するために、川上産業から川下産業まで一括したバリューチェーンの構築をし、関連会社を増やし、ネットワークの構築をはかっています。
ちなみに、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、双日、豊田通商の7社が、いわゆる総合商社です。
総合商社強み・弱み
純粋にひとつのビジネス規模の大きさが桁違いです。
インフラ・資源・原材料など数兆から数億規模のビジネスを経験できます。
当然、事業規模が大きく売上も大きいため、給与水準も総合商社が一番高い傾向にあります。
「ラーメンから航空機まで」幅広いビジネスを手掛けています。
資源・インフラ・原材料・化学品・コンビニ・レストラン・不動産などありとあらゆる可能性に挑めます。また、この様な背景から特定の事業が不況に陥っても、その他事業が好調になるなど全体としての売上や利益を確保しやすいリスクマネジメントにもなります。
ビジネス規模が大きいということは、やはり市場規模の大きな商材を扱うことになります。
市場規模の小さく、ニッチな商材を扱うことは難しく、顧客層もより大手で規模の大きい顧客を相手にし、事業規模の小さな顧客を満足させることが難しい事業形態です。
事業規模が大きい分、新規プロジェクトが成功すれば利益も大きい分、逆に失敗すると先行投資した損失もかなり大きいです。
専門商社
専門商社は特定分野や業界に関わる商材に特化した商社です。ある特定分野、業界の専門知識やマーケティング力、ネットワークを駆使して、総合商社では手の届かない顧客層にきめ細かい対応をして、顧客との取引を行います。
基本的には、トレード(貿易・販売・物流)がメイン業務で、収益の柱はトレードから得られる売買手数料です。専門知識を活かして、トレード以外にも、商品開発などを行う専門商社もあります。
または、特定分野が複数ある、複合型専門商社と呼ばれるタイプの専門商社も存在しますが、事業規模はやはり総合商社より小さく、トレード業務がメインになります。
総合商社系専門商社
総合商社の特定分野を軸に設立される、または買収された総合商社の子会社です。
総合商社自身が手の回らない専門性の高い商材を扱っており、小規模な案件を担当することが多く、総合商社の弱みをカバーするためのグループ会社との役割です。
メーカー系専門商社
商品を製造するメーカーの販売部門が独立、または軸として設立した専門商社です。
メーカーの営業部隊の様な形で商品を販売し、利益を得ているのが特徴。
取り扱える商品が限られていますが、経営が安定しやすいメリットがあります。
また、逆に資材、材料調達としての役割も果たしていることも多いです。
独立系専門商社
総合商社やメーカーに属さず、単独で事業を行っている専門商社です。
特定の分野や業界に精通しており、関連商材をメインにトレードをしていますが、特定分野を複数持つための活動も盛んで、複合型専門商社を目指して新規商材選択や分野選択の自由度が高いことが特徴です。
独自のコネクションや歴史を持っていることが多く、特定分野のメーカーに対して保有する専門的情報やノウハウを活用し、新商品の開発を支援するなども可能です。
専門商社強み・弱み
やはり特定分野・業界の専門性が非常に高く、技術的知識も豊富なため、業界の顧客からは頼りにされます。長い歴史の中でその分野に関連するサプライヤーと顧客とのネットワークが大小関わらず非常に多く、繋がりも強いのが強みです。
業界知識が豊富な点とネットワークの強さから総合商社に比べて仕事もスムーズな場合が多いです。
事業規模が比較的小さいため、顧客との距離が近く、きめの細かい対応が可能です。
痒い所に手が届く、めんどくさい事や分からない実務を頼めるなど、顧客側からすると対応の素早さや丁寧さが専門商社を使うメリットです。
専門分野の市場が旺盛であれば、売上も利益も波に乗って上げることができますが、市場が縮小すればその影響を正面から受けることになりまうす。そのため、分野によってはリスクマネジメントが上手くいっていない分野も多い印象です。
専門分野以外の商材に対するネットワークや知識が少なく、顧客層や市場規模に限りがあるため、大きな成長性があまりないのも特徴です。特定分野を複数持ち、複合型専門商社として徐々に総合商社のように顧客層を広げつつも、きめ細かい対応を目指せるかが課題です。
【貿易商社の主な役割】
トレード(営業・販売・貿易・物流機能)
商品を調達し、販売する機能に加え、納入までの貿易・物流の機能を果たします。
メーカーは代理店、いわゆる商社に営業・販売機能を任せる場合も多いです。
特に海外市場からのモノの調達や海外市場へのモノの販売はグローバルネットワークと貿易知識が必要不可欠なため、商社や専門商社を使用してトレードを行います。
この商品を調達し、販売するまでの物流と貿易実務を代行することで、手数料を実際に仕入れ価格に上乗せして販売することで利益を得ます。
投資事業
各事業分野での投資対象を見つけ、買収・出資した国内外の企業成長に伴う企業価値の増大や配当金などを通して収益を上げています。
どの分野の事業会社へ投資をしていくのかを各総合商社は判断し投資事業を進めています。
より多くの利益を生み出し、収入源を確保するために、川上産業から川下産業まで一括したバリューチェーンの構築をし、関連会社を増やし、ネットワークの構築をはかっています。
前述したようにこちらは総合商社が主に行っている事業となります。
市場調査、情報調査、新規市場開拓機能
貿易による海外企業との取引をするにあたって、市場調査や取引先企業の信頼性調査など必要な情報を入手し、提供する機能も商社ならではの役割です。
一部のグローバル企業を除いては、いまだに海外のネットワークや海外市場への参入に困っている企業は多く、その架け橋としての役割を担い、トレードビジネスを成功に導くことも大きな役割です。この様にグローバルネットワークを駆使して新規市場や新規顧客を開拓できることは商社や専門商社ならではの強みでもあります。
金融、在庫機能
海を超えた貿易売買には通貨の違いや支払いのタイミングなど売り手と買い手の間で要求が異なります。例えば、貿易取引の場合はリードタイム(船足)が国内取引より長くなります。売り手は出荷後すぐに資金を回収したいですし、買い手は製品を受け取って、その製品で利益を上げてから支払いたいため支払期間を遅らせたいのが通常です。
そこで、商社が支払いを一時的に負担し、後日回収するリスクを請け負うことで、売り手は資金を早く回収でき、買い手は支払いを遅らせることができます。
また、規模が大きい商社の場合、倉庫を持ち在庫機能を果たします。
一回の貿易で大量の製品を仕入れることで仕入れ単価と輸送コストを下げ、自社倉庫に保管し、顧客の欲しいタイミングで少量・短納期での提供を実現しています。
顧客としては在庫を持ちたくないため、この様な役割も大きな強みです。
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